窓のない窓際
 
人だかりが邪魔でなかなかクラスが確認できない。


「ちっ、見えねー」


舌打ちをしている俺の隣りで、背の高い寿也は背伸びをして既にクラスを確認したらしい。


「あ、あった。
俺1組」


俺を見てニヤっと笑う。


そして俺の頭を軽く撫でて、あからさまに作った笑顔を俺に向けた。


「自分の名前、見つかった?
あ、良かったら俺が探してあげようか?
……チビ瑞希くん」


かち────ん。


「うぜーッ!
チビじゃねーし!
175センチあるし!」

「サバ読んでんじゃねーよ。
本当は173のくせに。
俺知ってんだぞ。
身体測定んとき、お前が背伸びしてたこと」

「お、おま……!」

「ま、俺はサバなんか読まなくても182センチありますけどね」

「て、てめー……!
じゃあ俺も知ってるぜ!
お前1年の調理実習ん時……」

「お、お、おい瑞希!
なんだ、お前も1組じゃん!
こ、今年もよろしくな!」

「あー!
なんだよテメェ!
話変えてんじゃねーよ!
つうかそのうさん臭い笑顔止めろ気持ち悪い!」


その時だった。


お馴染みのキーンコーンカーンコーンという鐘の音が俺たちの頭上で妙にデカく響いた。


気付けばさっきまでごった返していた校門の前は、しんと静まり返っている。


「あり?」


俺がキョトンと目を丸くしている隣りで、寿也は顔をサーッと青く染めていく。


「あり?じゃねーよ!
遅刻じゃん!」

「マジかよ!!?」


俺たちは全速力で新しい教室へと向かった。

 
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