窓のない窓際
「瑞希、残念」
「は?
何が」
「水上(ミナカミ)、彼氏いるよ」
ふあっとダルそうにあくびする寿也に勢い良く食いつく俺。
「水上!?
水上というのかあの子は!
なんつー可愛い名前だ!
何水上っていうの!?
佐藤水上!?
吉田水上!?」
「お前バカじゃねーの?
水上は名字。
名前は確か梨華(リカ)」
「水上梨華!?
めちゃくちゃ可愛いじゃん!」
一人盛り上がる俺を、寿也は面倒くさそうに眺めている。
「……つーか聞いてた?
あいつ彼氏いるって言っただろーが」
「へえ?
誰?」
「誰かまでは知らない。
他校だとは聞いたけど」
「ふーん?
まあ、いてもいなくても関係ないんだけどな」
水上梨華、ね。
彼氏には悪いけど、別れてもらいましょーか。
あいつは絶対俺のものにする。
「……あんまり無茶すんなよ」
寿也が呆れたようにため息をついたけど、今の俺には聞こえなかった。
だって今の俺の全神経は、水上梨華、あいつに向けられてるから。