窓のない窓際
 
俺はいつも通り寿也の足を踏んづけた。


「いって!
何すんだテメー」


騒ぐ寿也を華麗にスルー。


俺は花びらを指で撫でた。


ネックレスがだめなら、やっぱり無難に花だよな。


女って花好きだし。


アクセサリーと違って花はセンスとか好みとか関係ねーしな。


ということで、昨日わざわざ花屋に行った。


まあ、女に花やるのは初めてのことじゃないんだけど。


女の誕生日とかホワイトデー、そういう特別なイベントの時にはよく安い花束を送る。


それだけでバカみたいに喜ぶ女。


「お花くれるなんてロマンチック!」って騒ぐ女。


そして、あげたもの以上の「お返し」をくれる女。


2、3千円の花束やっただけで、2、3万のものが返ってきたりする。


やっぱり女って低脳。


そんなこと考えてたら、なんとなく思った。


特別なイベント以外で俺が女にプレゼントするなんて初めてかも……。

 
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