窓のない窓際
 
「バラ……?」


不意に水上の声が聞こえて我に返った。


「え、え!?
何!?
ごめん聞こえなかった!
もう一回言って!」


今までかたくなに口を閉ざしていた水上が喋ったことで、激しく動揺する俺。


水上はチラッと俺を見上げると、机の上に乗せていた花束を抱き上げた。


「このお花、バラ?」


水上は花束に鼻を近付けて目を瞑る。


おいおい、それは反則だろ。


めちゃくちゃ可愛いんですけど!


花束に顔をうずめている水上が眩しい。


「あ、うん、そう、バラ!
綺麗だろ?
なんか珍しい品種だって花屋の人が言ってて……。
めちゃくちゃ綺麗だったから、水上にぴったりだなって思ったりして……」


俺の話を遮るように、プチンという音が響いた。


水上がバラの花びらを一枚引き抜いた音。

 
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