窓のない窓際
 
「意味分かんねー!」

「もう諦めればいーだろ」


ほんのり暖かい風が吹く中、俺は寿也と下校している。


膨れっ面の俺の隣りで、深くため息をつく寿也。


「あんまりイライラすんなよ。
糖分足りてんの?」


寿也は食べていたたいやきをちぎって、小さい方の欠片を俺に渡す。


「えー、俺しっぽの方やだ。
頭の方よこせよ。
全然あんこ入ってねーじゃん、このしっぽ」

「文句言うなら食うな」


買ったばかりのたいやきは、ほかほかと湯気を立てている。


俺は寿也にもらったたいやきをくわえて、再び地団太を踏んだ。


「あー!
めちゃくちゃ屈辱的!
この俺がたかが一人の女にこんな手こずるなんて!」

「やっぱり物で釣ろうとしたのが間違いだったんだろ」


寿也はたいやきを頬張りながら、興味なさそうに言い放った。


 
< 58 / 165 >

この作品をシェア

pagetop