窓のない窓際
「意味分かんねー!」
「もう諦めればいーだろ」
ほんのり暖かい風が吹く中、俺は寿也と下校している。
膨れっ面の俺の隣りで、深くため息をつく寿也。
「あんまりイライラすんなよ。
糖分足りてんの?」
寿也は食べていたたいやきをちぎって、小さい方の欠片を俺に渡す。
「えー、俺しっぽの方やだ。
頭の方よこせよ。
全然あんこ入ってねーじゃん、このしっぽ」
「文句言うなら食うな」
買ったばかりのたいやきは、ほかほかと湯気を立てている。
俺は寿也にもらったたいやきをくわえて、再び地団太を踏んだ。
「あー!
めちゃくちゃ屈辱的!
この俺がたかが一人の女にこんな手こずるなんて!」
「やっぱり物で釣ろうとしたのが間違いだったんだろ」
寿也はたいやきを頬張りながら、興味なさそうに言い放った。