窓のない窓際
 
「水上!」

「?
宮本くん……?」


俺が声をかけると、水上はピタッと足を止めた。


「もう帰んの?」

「あ……うん、帰るよ」


水上のバッグにふと目を落とすと、ポケットにタンポポがささっているのが見えた。


俺があげたタンポポ。


捨ててないんだな……。


大切に持っててくれてるんだな……。


タンポポ……時間が経ったせいでしおれてる。


けど、きっと水上は家に帰ったらタンポポを水にさすんだろーな。


何となく想像できる。


小さい花瓶にタンポポをさして「お水だよ、おいし?」って話かける水上の姿。


そんな姿を思い浮かべたら、思わずニヤケてしまった。


ま、あくまで俺の妄想なんだけど。


妄想っていうか願望?


そんなふうにしてくれてたらいいな、みたいな。


 
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