窓のない窓際
廊下をスタスタと歩いていた足を一旦止めた。
「……」
廊下の突き当たり、ある教室の前で立ち止まった俺。
その教室の中をこっそり覗き込んでみる。
ドアにピッシリはめられた縦長のガラス越しに見える教室の中には、何本かのギターとベース、ドラムやキーボードが綺麗に並べられていた。
「まだ……誰も来てねーんだな……」
ドアの横に張られた“音楽室”と書かれた表札を見て、長い息を吐いた。
無意識にキツく奥歯を食いしばる自分がいる。
表札からドアに張ってある1枚の紙に目を移すと、俺は再び長い長い息を吐いた。
「……バッカみてぇ、俺」
唇を噛み締めて、素早くその教室の前から身を翻した。
俺はさっきよりも速く下駄箱へと向かった。