窓のない窓際
その時だった。
「み……宮本くん!」
聞き慣れたこの澄んだ声……。
振り返ると、予想通り水上の姿があった。
「みな……かみ……?」
え……。
なんで?
帰ったんじゃなかったのかよ……?
目の前にいる水上を見て、俺はただ驚くしかなかった。
さっきまで隣にいた笹岡の姿も今度は見えない。
「待って……宮本くん……」
走って追いかけてきたのか、水上は肩で息をしている。
「な!?
どうした!?」
「だって……」
水上が今にも泣きそうな顔で俺を見上げた。
「だって……宮本くん……怒っちゃったから……」
おい。
ちょっと待て。
水上……お前……。
「それは反則だろ───────ッ!」
可愛い可愛い可愛い可愛いッ!
んな顔でんなこと言われたら誰でもときめくに決まってんだろ!
なんかもう許す!
全然許すよ!
「怒ってねえから。
俺の方こそ無理やり誘って悪かった。
じゃあな。
気をつけて帰れよ」
俺は水上の頭をポンと撫でて笑った。
「あの……そうじゃないの……!」
「ん?」
「あの……」
水上が恥ずかしそうに俺を見上げた。
「デート……してもいいかな……って」