窓のない窓際
 
その時だった。


「み……宮本くん!」


聞き慣れたこの澄んだ声……。


振り返ると、予想通り水上の姿があった。


「みな……かみ……?」


え……。


なんで?


帰ったんじゃなかったのかよ……?


目の前にいる水上を見て、俺はただ驚くしかなかった。


さっきまで隣にいた笹岡の姿も今度は見えない。


「待って……宮本くん……」


走って追いかけてきたのか、水上は肩で息をしている。


「な!?
どうした!?」

「だって……」


水上が今にも泣きそうな顔で俺を見上げた。


「だって……宮本くん……怒っちゃったから……」


おい。


ちょっと待て。


水上……お前……。


「それは反則だろ───────ッ!」


可愛い可愛い可愛い可愛いッ!


んな顔でんなこと言われたら誰でもときめくに決まってんだろ!


なんかもう許す!


全然許すよ!


「怒ってねえから。
俺の方こそ無理やり誘って悪かった。
じゃあな。
気をつけて帰れよ」


俺は水上の頭をポンと撫でて笑った。


「あの……そうじゃないの……!」

「ん?」

「あの……」


水上が恥ずかしそうに俺を見上げた。


「デート……してもいいかな……って」


 
< 96 / 165 >

この作品をシェア

pagetop