青い空の下で
海岸には風もつよく,
波も荒れて,
まるで冬の日本海のようだった。

そして,
私の心のうちを表しているようで,
私は思わず首をすくめ,車から降りた。

砂浜に足を取られながら,
向かい風に身体を持っていかれそうにながら,足を進めた。

すると,
私の目の前に長身の男が二人,
肩を並べて歩いていた。

その一人の後姿に私は目を奪われた。

その姿は,
決して忘れたことのない
真人そのものだったから。

私は,
思わず踵を返して来た道を引き返した。

ここで真人に逢うわけにいかなかった。

別人であって欲しいと思いながら,
私は車へ向かって駆け出していた。

「あの・・・」

車へようやくたどり着いた時,
店で声をかけた少年がそこに立っていた。

私は,
真人かもしれない男の
後姿をみた驚きと,
急いでそこから逃げてきた動悸で,
肩が激しく上下させるほどの
激しい息遣いで,
ドアミラーに手をかけて
車に身体を預けて,
その場で大きく深呼吸を繰り返した。

「大丈夫ですか?」
少年は私の背中をさすりながら,
声をかけてきた。

「ええ。。。」
私は声にならない声で答え,
車のドアをあけると,
中から水を取り出し一気に飲み干した。

少年は私が落ち着くまで,
しばらく背中をさすってくれていた。

「もう大丈夫よ。
 それより,話って何かしら?」

私は少年の顔を見ると聞いた。

本当に綺麗な顔立ちの男の子だわ。

とさっきまでの自分の動揺を棚にあげて,彼に見とれてしまった。

しかし,
いつまでもここにいるわけにはいかず,ここからどこに場所を移そうかと頭の中で考えていた。

< 30 / 71 >

この作品をシェア

pagetop