機動装甲Ⅲ
PHASE01

「え?」

メカニックが問いかける。

「アサルトカスタムの脱出装置を取り外せ?」

「そうよ」

コンロット社宇宙輸送艦のAMハンガー。

無重力状態で浮遊したまま、私はメカニックに頷いて見せる。

「撃墜されても脱出できる…その安心が油断を生む。被弾すれば確実に死ぬ…そのくらいの覚悟をもっていないと倒せないのよ、あの男…帝真紅郎はね」

私の決断に迷いはない。

敢えて退路を断つ。

そのくらいの気がなければ、彼を討つ事は出来ない。

私はその為にコンロット社についたのだ。

「しかし、メカニックとしてそれは聞けません。メカニックは機体を万全の状態に整備するのが任務です。それを、脱出装置を取り外すなどという不完全な状態で…」

「いいではないか」

食い下がるメカニックの言葉を制して、レイカーが無重力のAMハンガーを舞った。

「本人がそうしたいというのだ。好きにさせればいい。彼女にはその権限を与えている」

そう言って彼は私の顔を見た。

「『自分の意思で脱出などできない』…そういう状況下に己を追い込みたいのだろう?」

「…ええ」

私は頷き、目の前のプラチナシルバーの機体を見上げた。


< 1 / 40 >

この作品をシェア

pagetop