機動装甲Ⅲ
用件が済み、俺と茜は艦長室を出る。

「真紅郎…あの…」

茜が俺を見上げる。

部分おさげの髪を揺らし、いつになく不安げな表情を見せる茜。

こいつとはパイロット養成学校の頃からの付き合いだが、こんなしおらしい表情を見たのは初めてかもしれない。

どうやら茜も一端の女だったらしい。

「何も言う必要はない」

別段表情を変えるでもなく、俺は茜の顔を見た。

「俺はお前の恋人を殺し、お前をも討とうとした。お前も俺を討とうとした…こんなくだらない事の繰り返しが、戦争という奴だ…」

それは俺なりに考えた結果、導き出した『戦争』という行為の結論。

思想、大義、政治的背景。

そんなお題目はどうでもいい。

結局人が人を殺し、際限なく争い続ける。

何も生み出さない、くだらない行為。

それが戦争という奴だ。



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