機動装甲Ⅲ
渡されたカタログに目を通す。

CAM-002 シグムンド。

北欧神話およびゲルマンの叙事詩に登場する英雄の名を持つAM。

「頭部メインカメラこそドラグーンと同じ単眼ですが、他は全くの新設計…白金茜には申し訳ないが、アサルトカスタムすらシグムンドの性能の前ではかすみます」

メカニックの言葉には、愛息を自慢するかのような色すらあった。

機体にかぶせられたシートの隙間から、辛うじて頭部が見える。

頭部には中央に一本、左右に二本ずつ、計五本の角状のアンテナが配置されている。

指揮官機に相応しく、通信系統が強化されている証であった。

「機体速度も尋常じゃないですよ…あのソルジャーMk―Ⅱをも上回る飛行速度…ただしそれ相応の負荷も覚悟していただく必要があります…最大12G…少佐でなければとても薦められない機体だ」

「願ってもない」

私は不敵に笑った。

「それくらいでなければ、私の愛馬は務まらん」




< 8 / 40 >

この作品をシェア

pagetop