【長編】ホタルの住む森
一生懸命思い出を話す彼女を、思わず腕の中に閉じ込める。
うん、知ってる。
覚えているよ。
驚いて目を見開く彼女は、あの日僕を見て振り返った少女のままだった。
君は約束を守ってくれていたんだね。
瞳を閉じる…
想いが重なる…
その少年が僕だと知った時、彼女はどんな顔をするだろう。
唇に触れるあたたかい想いを感じた時、赤紫の傘は茜の手を離れ雨に濡れていた。
紫陽花に寄り添うように
二人が隠れていたあの日の傘のように
** 銀糸の午後 紫陽花の夢…11年後 Fin **