【長編】ホタルの住む森
Side 茜
「ねえ、見て晃。すごいでしょう?」
私は晃をとっておきの場所に連れてきた。
毎年家族で花見に訪れるこの場所。
私のお気に入りの場所だ。
この大きな枝垂桜の下にはたくさんの家族の思い出がある。
春の陽だまりのように琥珀の瞳を揺らす優しいママの笑顔。
銀の髪に桜の色を映す様に紫の瞳で細く微笑んだパパの笑顔。
春風の如く全てを優しく包んでくれる姉、沙紗の艶(あで)やかな笑顔。
生まれる落ちる時に心を分け与えた双子の姉、蒼の穏やかな笑顔
去年の春までは、毎年家族でこの場所へ遊びに来た。
私の物心ついた頃から毎年…。
一昨年の12月に私たちの両親が亡くなるまでは。