【長編】ホタルの住む森
私の夢は自分で作ったウェディングドレスを着て、愛する人のお嫁さんになること。
そして、いつかその人の子どもを産んで、おかあさんになることなの。
だから、そんなに余裕の無い結婚式なんてイヤだった。
晃は私の時間が長くない事を誰よりも感じているから、焦っているんだと思う。
でも、これだけは譲れない。結婚式は自分の手で作ったドレスを着たいの。
私の人生で最後に輝いた証しが欲しいから。
晃と言い合いになった私は家を飛び出し、いつの間にか近所の神社の境内に来ていた。
子どもの頃ここでよく遊んだな。そんなことを考えながら本殿をみつめる。
ここは昔から私の泣き所だ。
子どもの頃から体の弱かった私は何度もここの神さまにお願いに来た。
どうか私の体を治してくださいと。
願いは完璧ではないけれど、何度もあった発作から私を救い、今日まで生かすという形でそれは叶えられたと思う。
神さまはもう一度私の願いを叶えてくれるだろうか?