【長編】ホタルの住む森
家を飛び出した茜を追いかけて、神社の境内で茜を抱きしめた時、二度と離さないと心に誓った。
鉛色の空が涙を流すように振り出した雨は僕たちを境内の拝殿へ閉じ込めた。
一気に雨足が強くなる。視界がなくなるほどのスコール。
二人のいる拝殿の屋根からも滝のように水のカーテンが落ちてくる
勢いの強さに霧のように雨が舞い上がり、軒下で雨宿りしている僕たちにも、霧雨となって降りかかる。
風邪を引くのは茜にとって命取りになりかねない。
僕は茜を庇うように腕の中に閉じ込めた。
霧に濡れた茜の髪が甘い香りを放ち、僕の鼻腔をくすぐる。
触れ合う部分から伝わる互いのぬくもりが胸の鼓動を早くする。
僕の胸に顔を埋める茜の唇が艶っぽい表情で僕の名を呟くと、髪から零れ落ちる水滴が首筋を伝い胸元に吸い込まれるのが視界に入った。