【長編】ホタルの住む森
霧のように舞い上がる水滴が首筋から胸元へ滑り落ち、求め合う度、煌き飛散する。
乱れた髪
差し伸べられる細い腕
艶っぽく色付いた茜の柔らかな唇に想いは更に加速する。
もう何も考えられなかった。
…ただ、茜が愛しい
更に大きくなった雨音が茜の甘い声を奪い取って、この世の全ての音をかき消してゆく。
瞳を閉じても感じるほどの眩しい閃光が走り、僕はしっかりと茜を抱きしめた。
二度と離さない。最後まで絶対に護り続けると心に誓って…。
二日後
僕たちは籍を入れ、正式に夫婦となった。
結婚式は茜の希望どおり12月22日の誕生日までお預けだけれど、僕は幸せだった。
もう一時でも離れていたくは無かったから。