【長編】ホタルの住む森
――茜の命を受け継ぐもの――
「お願い、晃。私の愛を受け継ぐものを私は産みたい。私が生きた証しに…」
――茜が生きた証しに…?
「私たちが愛し合った証に…」
――僕たちの愛の証しに…?
茜はもう、泣いていなかった。強い決意を秘めた瞳で僕を見つめてくる。
痛いほどに、苦しいほどに真っ直ぐな瞳で僕に訴えてくる。
この子は茜自身なのだと…。
「女性は命の受け皿なんだよ。
この身に宿った命を、大切に育んで、新しい命を世に送り出す。
それが私の肉体としての命の終わりでも、魂の終わりではないの。
命は確かに受け継がれるのだから…」
――僕たちの愛を、受け継ぐ命
それを育む茜は、とても神々しく大地の女神のように温かく優しい表情をしていた。