【長編】ホタルの住む森

「茜、僕は君に何かあったら、この子を恨んでしまうかもしれないよ」

僕はきっと、情けない顔をしていたと思う。

もう僕には何もいえないよ。どんなに反対しても君はこの子を産むんだろう?

「大丈夫よ。私には優秀なお医者様の卵が24時間つきっきりで体調管理してくれているんですもの」

茜は僕の腕の中でニッコリと微笑んだ。

優しく、温かく、全てを包み込むような深い愛情を秘めた瞳で…。

「それに、晃はきっとこの子を愛してくれる。
どんな形で生まれてきてもね。
この子があなたの生きる希望になってくれる。
そして、いつかあなたを未来に導いてくれるはず」


「僕の…希望? 導く子?」


茜は何を言いたいのだろう?僕の希望の全ては茜なのに…。

「そうよ、この子はあなたを幸せに導いてくれる天使なのよ。
私はこの子を産んで死ぬつもりは無いわ。生きて3人で暮らしたいのよ」


切望ともいえる心の叫びだった。


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