【長編】ホタルの住む森
―――あかね――――
君を助けられなかった
あの日の紫陽花の約束を守れなかった
君の望んだ家族3人の時間を与えてあげられなかった
君を一人で逝かせてしまった僕を許して……
ふぇ…
小さな声にふと我に返ると、茜の腕の中で小さな命が身動きしていた。
この子にとって、これが最初で最後の母の腕の中。
せめて君がこの子を腕に抱く姿を残したい。
窓からさす朝日は、すでに眩しく世界を優しい金色の光で覆っている。
君とこの子の幸せな時間を、包み込むように明るく優しく照らし出している。
僕は携帯を取り出し、天使を抱く女神にむけた…。