【長編】ホタルの住む森
【短】ホタルの舞う夜
君にプロポーズした夜は月も僅かな星明りも無い闇の夜だったね。
今夜は細い細い三日月ととても綺麗な星明りが僕の手を引っ張るようにして歩く暁の横顔を照らしている。
茜……
またホタルの季節が巡ってきたよ。
君にプロポーズしたこのホタルの小道には今年もたくさんのホタルが舞っている。
あの夜は僕らの未来のように進む道すら見えない真っ暗な闇の中、幻想的に舞う小さなホタルたちだけが僕らの歩く道を照らしていた。
僕らの進む不安定で暗い道を照らすほんの僅かなホタルの灯。
それでも僕たちはその灯りを頼りに手を取り合ってしっかり歩いていたよね。
共に心を繋いで魂を抱きしめて愛し合ったね。
今夜の星明りはあの夜より僅かに僕たちを明るく照らしてくれているよ。