【長編】ホタルの住む森

君と出逢って5度目の夏がやってくる。


君の忘れ形見はこの春2才になったよ。

とてもやんちゃで僕も蒼も右京も手を焼いているんだ。

今だってほら、手を離したらすぐに闇に吸い込まれそうな、こんな暗がりでも恐れもせずに僕の手を振り切って走り出そうとするんだ。

誰かと何かを語る様に首を傾げては笑う暁を見ていると、君が傍にいて彼を見守っているように見えるよ。


暁の手を引いて君と三人でこの光景を見たかったね。

淡い光は暁を抱きしめるように取り囲み闇夜にその姿を浮かび上がらせる。

君が暁を抱きしめているように見えてしまうのは僕の思い過ごしなのかな。

在りし日の君の笑顔を思い出しその姿を求めホタルの舞う闇へ、そして空へと想いを馳せる。

君はここに僕たちと一緒にいるんだろう?

僕がそう願うのはおかしいと思うかい?




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