【長編】ホタルの住む森
「茜に笑われちゃうね。僕は弱虫かな?」
小さく呟いて暁を抱いたまま立ち上がるとギュッと抱きついてくる暁の温もりが僕の心を癒すように優しく包み込んでくれる。
「あきらくん、よわむしじゃないよ。
ぼく、あきらくんだあ~いすき。」
その言葉に込み上げてくるものを隠すように暁をふわりと抱きしめ、顔を隠した時、それまで暁を取り巻いていたホタルが一斉に舞い上がり僕たち二人を包み込んだ。
無数のホタルたちが夢のように幻想的に舞い上がり、一瞬宇宙に放り出された錯覚にさえ陥る。
美しく飛び惑うホタル達はやがて、僕たちを抱きしめるように集まってきた。
刹那…
懐かしい君の香りがしたよ。