【長編】ホタルの住む森

あなたが生まれた日の事を私は忘れない


太陽が喜びにキラキラと輝いて、風があなたの為に子守唄を歌っていた

月が優しく夜空を照らし、あなたに囁くように瞬く星たち

まるで誕生を待ちかねたように世界があなたを受け入れている


あなたがその天使の微笑であなたにだけ見える私を見つめる時

私の中の悲しみとか苦しみとか、心に重くかかる物を全て一瞬で取り払ってしまう

風と歌い、月と語り、太陽と笑うあなた

小さな手を差し伸べ、穢れない眼(まなこ)で世界を見つめるあなた

この世界がいつまでもあなたにとって優しい歌を歌ってくれますようにと願いを込めて

触れる事の叶わない小さな命を心で抱きしめる。

この手に触れる事も、抱きしめてぬくもりを感じる事も私にはもう出来ないから…

せめてあなたの生まれたこの瞬間を心のアルバムに閉じ込める

私の時が止まりあなたが時を刻み始めた瞬間を永遠に私の中に刻もう



あなたが生まれた日

風はあなたの為に子守唄を歌い、星はあなたの為に煌いた

私の愛しい子

この世界がいつまでもあなたと晃を愛してくれますように…





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