【長編】ホタルの住む森
最初は蒼と右京の協力を頑なに拒んだ晃だったが、茜の最後の願いを告げたとき時、葬儀でも泣かなかった晃が初めて涙を見せた。
あの日の事を右京は今でも切ない気持ちで思い出す。
晃のあれほど取り乱した姿も見たことが無ければ、あれほど哀しげに泣く人の姿を見たのも初めてだった。
自分の半身を失い心ごと奪い去られた痛みを独りで抱え耐えていた晃。
今でもふと蘇るあの日の光景には胸が潰れる思いになる。
右京にとっても妻の最愛の妹の忘れ形見。
そして親友の唯一の心の支えである暁は息子も同然の大切な存在だ。
だからこそ一人娘の杏とは、それこそ兄妹のように育ててきたのだ。