【長編】ホタルの住む森
茜が逝き、暁が生まれたあの朝から7年…。
今年の4月6日も暁の生まれた日を祝福するような燃えるような茜色の朝焼けの夜明けだった。
まるで茜が暁の誕生を祝って、生まれた時間に会いに来ているようで、晃と暁は毎年その時間に二人で朝焼けを見る。
それが暁にとって亡き母と三人で祝う誕生日の行事でもある。
今年の暁の誕生会は入学祝いと重なった為いつもの年よりも大きなケーキが用意されていて、暁がこの日を楽しみにしていたのをみんなが知っている。
よく晴れた春の午後の陽射しが心地良い事もあって、急きょ場所を高端家の室内から庭へと変更することになり、早く始めたいと待ちきれない暁と杏が大人を急かしてテーブルの飾りつけなどの準備を率先して始めていた。
暁が指示を出し、それに従ってまだ3歳の杏が皿を運ぶ姿にハラハラしつつも小さな二人がせっせと準備を進める姿に思わず全員が微笑まずにいられない。
そのとき、暁が人数分よりひとつだけ多い椅子を持ってきた。
「天使の分だよ」
無邪気に笑う暁に誰もそれを咎めるものはいなかった。