【長編】ホタルの住む森
月明かりの無い夜、部屋は闇に包まれる。
それでも彼女の香りが残る部屋は、先ほどよりずっと温かく感じた。
「茜…今夜は夢の中でもう一度君と出逢った夜を過ごそう」
永遠の恋物語が始まった運命の夜を何度でも繰り返し夢に見よう。
あの日に戻って何度でも君に恋をしよう。
たとえその先に待っている悲しい運命を知っていても…
それでも僕は君を愛することを止められないと知っているから…
君の愛を知らない永遠を生きるくらいなら
君を愛して生きる一瞬を躊躇うことなく何度でも選ぶよ
微笑む君の写真と語り合う長い夜を過ごすのは切なくて
苦しいほどに溢れ出る思い出が愛しくて
何度でも何度でも君と過ごした幸せな時を繰り返し『思い出』という夢の中で生き続ける。