【長編】ホタルの住む森

これが亜里沙の策であることは、陽歌とて気付いている。

亜里沙は陽歌が拓巳と付き合うことを望んでいるのだ。

だが、たとえ親友の望みであっても、それだけは色んな意味で受け入れることが出来ないでいた。

実際、周囲の目を気にする事無く堂々と会社で告白する拓巳の気持ちが本物だとは陽歌には思えなかった。

最初の頃は戸惑ったり真剣に返事をしていたが、今ではまるで年中行事のようなものだ。

6年も告白され続けていると免疫も出来るというもので、最近は一種の虫除け対策なのだろうと思っていた。つまり陽歌を本命と宣言している間は、しつこい女に付きまとわれること無く、割り切った後腐れの無い女と遊ぶ事ができるという訳だ。

良いように使われているような気もするが、拓巳は陽歌にとっても今では良い友人であり、恋人にはなるつもりは無くても、友人としてずっとこの関係が続いていくのならば、カムフラージュの告白ぐらい構わないと、大らかに受け入れているつもりだった。



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