【長編】ホタルの住む森
「今までのこと考えたってまともであるはずが無いじゃない」
右手を額に当てると少し大げさに頭を振って嘆いてみせる
「何?僕って信用されてないんだ。ひどいなぁ」
晃は笑いながらそう言うと、背後からぎゅうっと私を抱きしめて耳元に唇を寄せた。
耳朶をかすめる様に唇が動き、掠れる声が体の奥底に直接振動を送るように甘く切なく響く。
「じゃあ、朝までこうして離さないって言うのはどう?」
一瞬息を飲む。
言葉がでない。
「ずっと抱いていたい。朝まで…。
毎朝君の笑顔で目覚めたいよ」
……それは、叶わない夢だよ。
残酷な事を言わないで。
それは夢見てはいけない事なの