【長編】ホタルの住む森
どんな些細なことでも、彼女を救う可能性があるのなら、命に代えても助ける覚悟はできていた。
自分の命を捧げて彼女の病が治るならと、何度望んだだろう。
過去を振り返ると後悔しかない。
もっと出来る事があったのではないかと思うたびに、晃は罪悪感に苛まれる。
茜を生かせなかった罪。
茜を逝かせてしまった罪。
彼女を救えなかった痛みを抱え、晃の時間はあの日に止まったままだった。
アプローチを横ぎり、屋敷には不似合いな大きな松の木を見上げる。
この松には精霊が宿っているのだと言った茜を笑い飛ばし怒らせた記憶が蘇り、小さな笑みが零れた。