【長編】ホタルの住む森
インターフォンを押すと軽やかな声がして、腰までの黒髪を揺らした茜と瓜二つの笑顔が出迎えてくれた。
茜が逝ったあと、あまりにも似ている蒼に会うの辛かった時期もあった。
だが、どんなに同じ顔でも蒼は蒼、錯覚する事は無かったし、別人だと自分の中でハッキリと認識できた。
なのに今日の自分はどうだ?
と、晃は自分に問いかけていた。
科学的にはどう考えても理解できない事実だが、如月陽歌という女性が茜の魂を宿していると心が信じて疑わないのだ。
晃は明日、蒼に陽歌を会わせたいと思っていた。
カウンセラーでもある彼女なら、この不可思議な現象について何か分かるかも知れないと思ったからだ。
双子の深い絆ゆえか、生まれ持った特殊な能力のせいか、蒼は今も茜を強く感じることがあるのだという。
晃はそれを自分もふとした時に自然の中に感じる、護られているような気配と似たようなものだろうと解釈している。
非科学的で誰かに話したら馬鹿にされそうな事も、彼女は当たり前のように受け止める。
今回の事も偏見を持たず受け入れてくれるだろう。