【長編】ホタルの住む森
「……やだ、却下」
搾り出す言葉。心が悲鳴をあげている。
愛していると素直に告げて、この腕に飛び込めたらどんなにいいだろうか。
私だけを真っ直ぐに見つめてくれる晃の視線。
いつかその瞳に映るのは私ではなくなってしまうのはわかっている。
ねえ晃、気付いてる?
あなたは凄くもてるのよ。
私がいなくなったら、すぐにたくさんの女の子が声をかけてくると思うわ。
すぐに新しい恋人が出来て、私の事は忘れていくと思う。
そうよ、それが晃にとって一番良いの
体を硬くしてぎゅっと目を閉じる。
目を閉じても鮮やかに残る降りしきる桜の残像。
雪のように散華する美しい風景。
かつて戦地で花のように命を散らすことを散華と言ったそうだ。
この風景はまさにそれに相応しい。
私の一生も、一斉に咲き誇り潔く散るこの桜のようでありたいと思う。
桜の花びらはキャッチできなかったけれど、今ならきっと言えると思う。
今しか言えないのかも知れない。