【長編】ホタルの住む森
「晃…」
「ん?」
耳元で甘く響く声
大好きな、狂おしいほど愛しい人の声
好きだよ。晃…。愛してる。
全神経を背中に集中させる。
晃に私の心を気付かれないようにするために。
決して涙を流さないように、私に出来る最高の笑顔で送り出してあげるのよ。
晃あなたは私を忘れて幸せになって…。
指先が冷たくなっていくのがわかる。
小刻みに震える唇を噛締めて声が震えないようにと願う。
舞い踊る桜の花びらが、砕けていく私の心のように見えて目を伏せた。
すぅ…。
呼吸を軽く整えて静かに言葉を紡ぎだす。
「別れて欲しいの」