【長編】ホタルの住む森
心のかけら
お久しぶりです…。
少しふくよかになった昔の面影に向かって陽歌は微笑んだ。
「まあ、陽歌ちゃんなの?
随分綺麗になって…全然分からなかったわ」
嬉しそうに駆け寄り陽歌を抱きしめると、フワリと懐かしい香りがした。
相変わらず優しい人好きのする笑顔は、当時陽歌が憧れていたものと変わっていなかった。
両親を事故で失い、傷ついた陽歌は自分の中に閉じこもっていた。
治療もリハビリも嫌がり我が儘で皆を困らせていた彼女に、幸江はいつも優しく陽歌が頷くまで根気良く付き合ってくれた。
当時二十歳そこそこだった幸江は今ではすっかり貫禄がでている。ナースキャップの色からして婦長かそれに近い立場にいるらしかった。
二人は16年ぶりに懐かしい話に花を咲かせた。
拓巳の治療が終わっても名残惜しくて、幸江の仕事が終わる時間に合わせ、駅前のファミリーレストランで待ち合わせをすることにした。
話したいことはいっぱいあった。
そして、どうしても教えてもらいたい事が一つあった。