【長編】ホタルの住む森

三つめは私の最後の我侭。

病院で友達になった目の見えない女の子がいるの。

彼女は事故で両親と目を失って、いずれ伯母さん夫婦に引き取られるらしいの。

両親もいない目も見えない彼女に、私は光を残してあげたいのです。

私の角膜を彼女にあげて欲しい。

両親が死んだ時、私には沙紗姉さんや蒼がいたけれど彼女には誰もいない。

お願い、反対しないで。私に出来る最後の事だから絶対に望みを叶えてね。

18年間、蒼には我が儘ばかり言ってきたけれど、これが最後の我侭です。


何故晃ではなく蒼に頼むのかと、あなたは思うでしょうね。

でもこれだけは私の逝った後の晃に頼む事が出来ないの。

彼は私の髪のひと房、爪の先までも大切にしてくれている。

体の一部を誰かに提供することは、晃にとって余りにも残酷だと思うのです。

でも蒼、あなたなら私の気持を分かってくれるよね?

彼女の主治医の水城先生には事情を話してあります。

彼女は和泉陽歌ちゃん。小児病棟に入院しています。


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