【長編】ホタルの住む森

晃の目からは涙が零れていた。

晃を見つめる蒼の目にも、大粒の涙が溢れていた。

部屋に戻ってきたとき、彼女の目が潤んでいたのは、別室で手紙を読んだからだったのだろう。


どんなに辛かっただろう。


どんなに寂しかっただろう。


愛するものを残してひとり逝かなければならなかった茜の悲しみが、ひしひしと胸に迫ってきて、涙が止まらなかった。


どんなに生きたかっただろう。


茜の手紙を抱きしめ涙を流す晃に、蒼は封を切ってないほうの手紙を差し出した。

「茜から晃君への手紙よ。
いつか茜以外の女性の話が晃君の口から出た時に渡してって頼まれていたの。
たぶん、今日渡すのが正しいと思う」


晃は涙を拭うと、桜色の封筒を受け取りゆっくり開いた。


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