【長編】ホタルの住む森

「おまえさ、伯母さんとやらに会って手紙貰ってきたら?」

その時になってようやく、何故伯母が自分に大切な約束について教えてくれなかったのかと、そこへ考えを廻らせる事が出来た。

自分が一番にしなくてはいけない事を見つけてからの陽歌の行動は早かった。

直ぐに立ち上がると「今から行く」と言って荷物を纏め始める。

こうと決めたら行動の早いのが陽歌である。

いつもの調子を取り戻したのを確認し安心した拓巳は、「俺も一緒に行ってやるよ」と言って笑った。


そのとき携帯が鳴った。

少し気持ちの軽くなっていた陽歌は、特に深く考えず携帯に手を伸ばしディスプレイを見た。

ビクリと体が硬直し、表情が固まる。

『高端 晃』の表示に、指を動かすことができなかった。


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