【長編】ホタルの住む森
琥珀色の想い
ドアを開けると待ってましたといわんばかりに蒼が飛びついてきた。
「ねえ、右京、晃君どうだった?」
「うーん。どうだろうな?」
こんないいかげんな言い方しか出来ないのか?と表現不足を補う言葉を捜してみるが上手く見つからない。
案の定「晃君の事心配じゃないの?」 と蒼が怒り出す始末だ。
心配だからわざわざ家まで様子を見に行ったのだという右京を無視し、蒼は「晃君、ちゃんと食べてるかな」と独り言を言いながらキッチンへ消えていった。
「あいつなら大丈夫だよ。ただの恋煩いって所だろ」
素直じゃねえんだよと、呟きながら、蒼の後を追いキッチンへ向かう。
ご機嫌を取るようにコーヒーを淹れる蒼の後ろに立つと、長い髪に口づけた。
サイフォンから立ち上るコーヒーの香りが鼻をくすぐり、心を落ち着かせてくれる。
コポコポとフラスコからロートへと湧き上がっていくコーヒーの粉をぼんやりとみつめた。