【長編】ホタルの住む森
唇を噛んで黙り込んでしまった陽歌に、拓巳は「自分の気持ちを試してみろ」と言った。
肩を抱き寄せられ、拓巳の腕に取り込まれる。
驚いて見上げた陽歌の視線を真面目な顔で受け止め、唇が触れそうな距離で呟いた。
「陽歌、このまま俺を受け入れろよ。お前が愛してくれるなら俺は全力で護ってやるよ。晃先生への想いも、お前の中の茜さんも全部追い出してやる。
でもお前が晃先生を愛していて、どうしても他の男を受け入れられないと思うなら…行けばいい。それがお前の選ぶ道なら止める事なんかできないからな」
答えられないでいる陽歌の耳元に、拓巳は痺れを切らしたように唇を寄せた。
「陽歌…好きだよ…」
温かい吐息が耳にかかって、くすぐったい感覚に体がピクンと跳ねた。
それが合図のように拓巳は唇を重ねた。
拓巳の唇は熱を帯びたように熱かった。
拓巳を受け入れよう。
彼はきっと『陽歌』だけを愛して幸せにしてくれる。
茜さんの事も…
晃先生の事も…
何もかも忘れて夢から解放されたい…。
陽歌は静かに目を瞑ると、拓巳のキスを受け入れた。