【長編】ホタルの住む森

「これまではそうだったかもしれないけどさ、今は違うんじゃない? 父さん昨日のあの人のこと気になってんだろ?」

「っ……!」

「昨日陽歌さんに会ってから、自分の行動が明らかにおかしいって全く気付いていないんだなぁ。
いくらあの嵐で来院する人がいないと言っても、診療所を臨時休診にして彼女を送るわ、その足で右京父さんの所へすっ飛んで行くわ…ビックリしたね。普段の父さんならありえないだろ?
帰ってきてからもずっとソワソワしてたと思ったら、朝から妙に凹んでいるし…俺としては見てて楽しいけど、あんまりこれが続いても困るんだよな」

普段冷静な父親が珍しく異常行動を起したのがよほどおかしいのか、暁は思い出してはクックッと喉を鳴らした。

言い返したいところだが、昨日の事に関してはそのとおりなので反論も出来ない。

一刻も早く蒼に彼女の事を話さなければいけない気がして、診療所を臨時休診にしてしまったのだから、確かに自分でもおかしいと思う。

朝の出来事も、自分では冷静なつもりだったのに凹んで見えたというのは、流石にショックだった。


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