【長編】ホタルの住む森
「…落ち込んで見えた?」
「この世の終わりみたいな顔してたぜ。今朝右京父さんが来たときもボーっとしてたしな。まるで恋煩いみたいだぜ?
意地張っても良い事無いんだし、いい加減自分に素直になれば? 父さんに恋人ができて喜ぶ人はいても、誰も反対なんてしないさ」
暁は笑顔を残し、静かに部屋を出て行った。
「一目惚れもいいんじゃない? 母さんもきっと喜ぶよ」
と言い残して。
『出逢ってひと目で恋に堕ちる事だってあるさ』
昼間の右京の台詞が暁の言葉と重なる。
晃…幸せになって……
茜の声が聞こえた気がした。