【長編】ホタルの住む森
晃は携帯を切ると、額に携帯をあてがうようにして俯いた。
安堵の溜息がでる。
拒否されるかもしれないと覚悟の上での電話だった。
それなのに彼女は受け入れてくれ、婚約もしていないと言った。
その言葉にこんなにもホッとしている自分がいる。
もう、自分の気持ちを認めないわけにはいかない。
彼女を思うと胸の鼓動が五月蝿い。
切なくて、愛しくて、会いたくて…
晃は顔を上げると再び携帯を開き発信ボタンを押した。
数回の呼び出しの後、相手が出る。
「…右京? 夜更けに悪いんだけど、蒼と一緒に今すぐに来て欲しいんだ」
晃は窓の淵に寄りかかり夜空を見上げた。
ホタルのように儚い瞬きは、微笑むように晃を見下ろしていた。