【長編】ホタルの住む森
天へ召される光に包まれフワリと体が浮き上がる。
茜は光の中で全てを思い出した。
自分がこの世に生を受けた訳を。
自らの病と死の意味を。
そして晃と巡り逢った真の理由を。
晃と生きた世界から引き離されるのを感じた時、茜は天に向かって叫んでいた。
ああ…神様…
全ての罪は私が一人で背負いましょう。
ですからどうか…
どうか彼の罪を許してください。
どうか彼をこの世で孤独にしないで下さい。
お願いです。どうか…どうか…
どうか彼を導いてください。
現世で巡り逢うべき運命の女性へと…。
茜の叫びに反応したかのように、光の世界が振動し、次の瞬間、茜の背に白銀の翼が広がった。
茜のいう『神』によって、彼女は新たな試練を与えられた事を陽歌は知った。
声も届かず、触れることも叶わない。ただ見つめることだけが許される存在。
生も死もなく、愛する者が逝った後も、そこに在り続けなければならない哀しい者。
晃の罪を背負い彼を幸せに導く為、茜は転生を拒み、晃を守護する天使となったのだ。
晃の幸せだけを祈り、永遠の時の中に身を置く決意をした茜。
その愛の哀しさに…
その愛の純粋さに…
陽歌は涙が止まらなかった。