【長編】ホタルの住む森
きみの瞳に映るもの
陽歌は真っ白な世界の中にいた。
ここは彼女の居る場所だと、先日の記憶が蘇る。
顔を上げるとすこし先に茜の後姿があった。
その瞬間、茜が陽歌の中から去ろうとしていると悟った。
このまま光の中に溶け込んだら、彼女は二度と手の届かない世界へ逝ってしまう。
陽歌は大声で茜を呼び止めた。
だがその声は光の中に吸収され、茜には届かない。
陽歌は必死で茜の後を追いかけた。
上も下も、右も左も、距離感さえもない光の世界は、無重力のような浮遊感があり上手く走れない。
何度も転び、声の限りに叫び、陽歌は茜を必死に追いかける。
茜に近づくにつれ、陽歌の姿は徐々に茜と出逢った頃の少女の姿に近づいていった。