【長編】ホタルの住む森
『私の死が確定した時点で、彼は転生の際に担ってきた役目の一つを終えたの。それによって運命は修復の方向へ動き始めていたわ。だから私は陽歌ちゃんと出逢ったの』
「待って? それじゃ茜さんは暁君を産んで死ぬ為に転生させられたっていうの?
私が茜さんと出逢ったのは、運命が私と晃さんが引き寄せる方向に動いたからだっていうの? そんなのって…っ…」
『哀しい話だけど…私達は愛し合いながらも互いを苦しめる為に出逢ったの。
私は晃に刑を科す為に、晃は私を死に導く為に現世で添わされたのよ。
今だからこそ解るけれど、生きている時に聞いても信じられなかったでしょうね。…愚かな罪を犯した私達に相応しい残酷な刑だわ』
「そんなの酷いわ。神様のする事じゃないわ」
『仕方がないのよ。私は巫女だったから…。
神を裏切り人々を傷つけた罪は、より重いの。代々神に仕える家系だった私と王族だった彼は契ることを許されなくて、私達は国を捨てて逃げたのよ。だけどそれは重大な国家への裏切り行為で結局私達は捕まってしまったわ。
王の主治医だった彼は、呪いにより病の床に伏している王を見捨てた罪人として幽閉され、私は神を裏切った者として、怒りを鎮める贄(にえ)となった。生きたまま胸を裂かれ心臓を捧げられたのよ。彼は…私の惨い死を知って、絶望の余り自ら死を選んだの。でもそれによって王の呪いを解く薬を処方できる唯一の者がいなくなってしまった』
「…そんな…」