【長編】ホタルの住む森

『…私達のしたことは、多くの民を傷つけ、王を裏切り、結果的に二つの国を滅ぼしてしまった。
死んだ後も決して許されない重罪だった。私は本来なら転生を許されない身だったのよ。
でも前世の罪を清算するために、数百年続くレクシデュール王家に掛けられた呪いを浄化するという役目を担って転生することを許されたの。
そして王家の末裔である父の娘として、再びこの世に生を受けたの。不思議ね。父には私が愛した男性(ひと)と同じ一族の血が流れていて、茜の中にもその血は受け継がれていたなんて』

「呪いを浄化するって…まさかそれが病気の原因?」

『そう。私は死をもって一族の呪いを浄化する為に病を抱えて生まれたの。
私の死によって呪いは解け、同時に使命を持って生まれた王家の血を次代へ受け継くこともできた。あの時そのまま天に召されていれば、天命を全うし呪いを解いて罪を償った私は、もう一度転生することが許されたでしょう。
けれど…彼との再会を望めない世界で生きるより、私は晃を救う道を選んだの。
陽歌ちゃん、あなたが言うように彼の刑が短くなったのは私が天使となったからよ。でもそれによってあなた達が出逢った訳じゃないの。あなた達は結ばれるべき運命の二人。晃の罪が許された時点で出逢っていたはずだわ。私のした事は、本来なら何十年後か、もしかしたら次の世の事だったかもしれない出逢いを、ほんの少し早めたに過ぎないの。私の事を馬鹿だと思う? それでも…彼を少しでも早く救いたかったのよ。私がしてあげられることはもうそれしか残っていなかったから』


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