【長編】ホタルの住む森
振り返ると陽歌が長い坂道を歩いてくるのが見えた。
真っ直ぐに晃を見つめて腕の中に飛び込んでくる。
結婚式の日、雪のように微笑んだ茜はとても儚く美しかった。
だが今日、晃の瞳に写る陽歌は、燃え立つような生命力に溢れている。
この丘を彩る全ての色に祝福されているように艶(あで)やかで美しい。
ああ…綺麗だよ。
今度こそ幸せになろう。
陽歌と共に三人で…長い人生を共に生き、添い遂げよう。
きっと幸せにすると誓うよ。
夕陽が沈む…
沈みかける刹那にひと際明るく輝く夕陽が、茜色の空を一層鮮やかに染める。
二人を祝福するように。
幸せにと語りかけるように。