【長編】ホタルの住む森
病院での定期検査が終わると私は必ず病院の裏手の小高い丘の脇道を入ったところにある竹林に行く。
いつだったか独りで泣きたくて、入院先の病院を抜け出して迷った際に見つけたこの竹林には、少し行くと開けた小さな広場がある。
誰が作ったのか知らないけれどベンチが一つ。
日中でも暗すぎない程度の影がさし、夜は月明かりが手元を照らしてくれる私の秘密の場所だ。
定期検査の後はいつも不安でいっぱいになる。
『あと、どの位生きられるのだろう』…と。
時には泣くために、時には波立つ心を鎮めるために、病院の帰りにここへ寄り時間を過ごす事は、いつの頃からか私の習慣になってしまった。