【長編】ホタルの住む森

町外れの小さな森の入口に、地元のほんの一部の人だけが知っている、通称『ホタルの小道』と言われる場所がある。

この森には色々な伝説があるため昼間でも余り人はやって来ない。

街灯も無く真っ暗な森の入口は、一見不気味で地元の住人でさえも避けて通る道だ。

だから一歩森に踏み込むと、そこには幻想的な光景が広がっているのを知っている人は少ないだろう。

闇夜に舞い踊るホタルの幻想的な光が、真っ暗な森をぼんやりと照らし出している。

至近距離であれば互いの顔も見えるくらいにその光は明るい。

だけど今の私は暗闇の中たった一人で、しかも足元を照らす灯りすら持っていない無防備な状態だ。

足場の悪いこの場所で勝手に動き回るのは危険だと判断して、蒼と右京が声をかけてくれるのを待つことにした。

そのとき、カサ…カサ…と森の奥のほうから人の歩いてくる気配がした。

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