【長編】ホタルの住む森
【短】晩夏の夢
この僕が…ひと目で恋に堕ちるなんて、ありえないと思っていた。
この僕が…溺れるほどにたった一人の女性を求めるなんて、ありえないと思っていた。
今でも時々不思議に思うことがある
あの夜、僕らを導いたものはなんだったのだろうと
昼間の熱さが嘘のように、心地良い川風が吹く夕刻
僕らは運命に導かれるようにして出逢った
退屈しのぎに渋々付き合ったはずのダブルデート。
相手に特別興味などなく、むしろ親友の惚れた姉のほうに興味があったはずだった。
双子なのだから似ていて当然だ。
それなのに、僕は迷わず茜に目を奪われた。
彼女の微笑みは、まるで月夜に舞うホタルの光のように儚く美しくて…
一瞬で僕の心を虜にした。
晩夏の風に誘われるように交わしたキス。
再会を約束したあの夜のキスが、僕に永遠の恋を刻み込むなんて…